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大規模修繕工事の問題点

2013/11/21

  1. 職長の見える化
  2. 雨がかりの仕事の悪さ
  3. 全ての工事にコンサルが必要か

関西圏のマンションに対して、飛び込みを約4000棟行い、色々な意見を聞けるはずでありましたが、窓口の大半が管理会社の息がかかった管理人ということもあり、かなり困難をしました。しかし、その中で神戸交流会との出会いがありました。宮前会長というカリスマ的な人物と出会い、その仲間との出会いもありました。また彼らに、年に十数回、数十時間、お付き合いしていただき、マンション大規模修繕の問題点を徹底的に討議できたことについては、非常に感謝する次第です。
先に挙げた三つの問題点は、全国どこの管理組合でも共通の大きな悩みであろうと思います。それぞれの問題について述べていきます。

1.職長の見える化

大規模修繕工事は誰が何をどうしているのか全くわからない状態が多いのではないでしょうか。一般的な建築工事では、28専門工事業者それぞれに職長登録をして作業をしていますので、現場の監督は、職長同士のコミュニケーションに気遣っていれば、自然と仕上がりがよくなっていくものです。したがって現場では、職長が最大のキーマンと言えます。技術的には各職種、一級二級と国家免許を取得していることも大切ですが、各業種のコミュニケーションが大事です。職長同士が互いに協力しなければ、建物の保護と美観がまとまっていけません。

例えば、タクシー業だと、交通規則遵守は安全運転の基本ですがそれだけで良いかと言えば乗客の安全はもとより、歩行者等の安全を確保する優しい運転をモットーとすることが使命でもあり、ドライバー一人一人がこれを全う出来るよう教育されています。それが我々でいう職長の使命です。企業はその延長線上であることは言うまでもありません。優秀な職長をいかに多く育てていくかどうかであります。この大規模修繕については歴史も浅く、職長教育や登録なしに施工されている例が多いために、事故や現場のトラブルを発生させているのです。職長は技術と安全を確保する上に、マンション住民という現場にお住まいされているお客さまに接する姿勢も問われます。

プロ同士の現場なら、大声、怒鳴り声は日常ですが、大規模修繕の現場は"サービス業"的な要素が大変高く要望されます。私は、"建設技術のしっかりしたサービス業"だと思っています。住民への対応もしっかりすることは、職長教育に入れていかなければなりません。


2.雨がかりについて

一般的にマンションの新築時の仕上げに関わった経験から言うと、m2単価が安く工期が短い為、特に最終仕上げについてはほぼ突貫になってしまう場合が多く、仕上剤については、塗材、タイルともに良質な材料が使われていない場合も多いです。皆さん、新築時を想像して下さい。

①外壁は足場を組み、シートを貼った中での作業は太陽の光が余り無い為職人さんの経験だけで施工するという言わば"エイ・ヤー"の世界なのです。足場をとってみるとつなぎに吹きむらが出てくるのが通常で、"こんなものです"ということで概ね引渡すことが多い為、塗布も規定以上には実施していないのが一般的です。

②外部鉄部の非常階段、手すり、駐輪場、駐車場、立体駐車場などの「雨がかり」といわれる箇所について述べますと、業者の作業場で鉄骨や鉄材、素材を切断して、その中でさび止めをし、屋外に出し、野ざらしの上にさび止めを塗っているのです。工期が近づくと現場に搬入し、取付、製作していく訳ですがビス、ボルト、ナットなどは、現場で取付するものですから、ほとんどさび止めを塗っていません。現場の塗装業者がその上に、中塗り、上塗りをしているのがほとんどなのです。マンション以外の建物だと、業者が製作する金物を素地のまま搬入し、取付けをしてもらい、塗装業者が下地処理、ケレン、さび止めを別途するのが通常で、将来のメンテナンスも含め現場の担当者が気付き、我々業者がアドバイスをして、その工事分を別途清算してもらうのが現場を永く維持するためのいわば常識なのです。ただ、図面や指示書には載っていませんので職長のコミュニケーションによるものです。

マンション全般から言うと足場をばらして竣工する時は、仕上げは一応化粧していることもあり、きれいに見えますが、中味はぼろぼろなものも見受けられます。

非常階段の雨のたまる所は、1年目からさびが出てきますが、住民は住んで間が無い為に気付かないことが多いのです。本当は竣工後5年位でメンテナンスを部分的に施工することが効果的です。進言します。一般的では10~12年目に施工することになるのですが、その際は"雨がかり"箇所は特別に考慮する必要があります。

※鉄はさびます。養生、清掃、ケレンが必要です。さびている所は素地までケレン、下地処理が必要なのです。


3.全てにコンサルタントは必要か(全国の70%は20~50戸未満です)

結論から言うと必要ではありません。"まちの大工さん"のKSKに任せてもらえれば、大丈夫です。
マンション自身はそう難しい建物ではありませんし、仕上から言うとほぼタイルと塗装の世界の仕事がほとんどです。雨がかりのメンテナンスをしておけば、2回目の大規模修繕も雨がかりと雨がかりでない仕上面も、塗材の変更があって当然です。雨のあたらない階段や廊下は、実はよごれているだけでほとんど変化していません。また足場も全面必要なくゴンドラ作業でも十分施工出来るのです。"安く早く"出来る大きな要素です。このマーケットも歴史を踏めばそうなっていくと想像出来ますし、必ずそうなっていくように仕向けていく必要があるのです。発注者がアマチュアの為につけ込まれた大きな要素です。

ただ、マンションの新築時の出来も含めて申し上げますと、第1回目の大規模修繕は非常に大事であります。躯体自身を見直すことからしても、専門家に依頼すべきです。
神戸交流会と徹底的に話し合いをし、最終的な結論を持ちこしたのがこの部分でしたが、新築時の様子がわからないこともあると思います。今まで述べましたように、新築の時は工期が短く、m2単価が安いのが通常である為に、デベロッパーが一番手掛けやすいのもマンションでありました。特に外部の仕上材については、色々問題があることについて述べてきたので、おわかりだと思います。
第1回目の大規模修繕は躯体のわかるコンサルが必要であり、第1回目をしっかりしておけば、60年後も100年後も自然災害がなければ、マンションは保つと思います。従来の考えでは公共施設も含めて通常40年位で建替をする目安とされていましたが、手入れを入念にしておけば長く保つものなのです。